yahooニュースで『魔女の宅急便』のニシンのパイについて、宮崎監督やツイッターの意見について書かれていたので、私も自分の感想を書いてみたいと思います。
『魔女の宅急便』の老婦人は、孫の誕生日にニシンのパイを焼いてキキに届けてほしいと依頼します。オーブンが壊れてしまい、困り果てる老婦人にキキは、古い薪のオーブンで火をおこしてパイづくりを手伝います。
運ぶ途中に雨がふりだし、ずぶ濡れになったキキは、それでもがんばって孫娘のもとへパイを届けます。しかし、孫娘は喜ぶどころか「私、このパイ嫌いなのよね」と言い放ち、キキはショックを受けます。
しかし、本当に孫娘が悪いのでしょうか?老婦人は優しいのでしょうか?私は老婦人の行動にも問題があると思うのです。
優しい老婦人は本当にやさしいのか
落ち込んだキキをはげましたり、優しい老婦人ですが、彼女はこう言います。「ニシンのパイは私の自慢料理なの」と。自分の得意料理だからおいしい、だからきっと孫も喜ぶはず…。
この考えは、相手に自分の好みを押し付けているだけなのではないでしょうか?
老婦人のセリフを聞くと、おそらく彼女は、以前にもニシンのパイを孫娘に振る舞ったことがあるようです。その時、きっとこう聞いたはずです。「おいしい(でしょう)?」と。
これは、祖母である自分の得意料理で、それをわざわざ作っているのだから、孫娘は「おいしい」以外の選択肢は与えられていないのです。祖母の前だから、母親(嫁?)に「おいしいって言いなさい!」と言われたのかもしれない。
そうした過去が「わたし、このパイ嫌いなのよね」につながったのではないかと。彼女はキキが老婦人を慕っていて、苦労してパイを作ったことなど知りません。孫娘にとってキキは、ただ荷物を運んできた第三者にすぎないのです。だから、本音がぽろっと出てしまったのではないのでしょうか。
彼女はさらに、「いらないって言ったのに…」とも言っています。断っているんですよ。おばあちゃんに。彼女の家は裕福で、パーティーの料理が足りないことはないのです。それでも老婦人は孫の言葉を謙遜と判断して「孫のパーティーに温かい料理を届けたいの」と、無理やりパイを送りつけてくるわけです。自分の判断こそが正義であると信じて。
また、老人は家電に弱いものですが、オーブンが壊れても「どうしましょう…」というだけで、修理を呼ぶでもなく、ただ困るだけで、キキが手伝ってくれるのを待っているようにも見えます。
老婦人はいくら足が悪いとはいえ、彼女は自分の手におえないことには目をつぶっているような気がします。どうしてもオーブンを使いたいのなら、近所の人に借りるなど、いろいろとやりようはあるでしょうに。
そんな面倒なおばあちゃんだからこそ、孫娘は老婦人をパーティーに呼ばなかったのではないかと思います。「おばあちゃんは足が悪いから、来てもらうのは申し訳ない」を口実にして…。
孫が本当におばあちゃんのことが好きで、パーティーに来てほしかったら、車で迎えにいくんじゃないでしょうか。なぜ自分が呼ばれないのか考えもせずに、孫が好きだと思いこんでいるパイを焼いて届けようとする老婦人に、私は恐ろしさを感じるのですが…。
優しさの押し付けと落とし所
こうした優しさの押し付けは、私も覚えがあります。母は私が帰宅すると料理を作ってくれます。それはとても嬉しいし、ありがたいと思っています。
しかし、仕事のストレスで胃にポリープができ、まともにご飯が食べられない状態でも、大量のおかずを出してきます。その中には母の好物で、私の苦手なおかずもあります。
前もって「ポリープがあるのであまり食べられない」と言っておいたとしても、母はため息をついたり「まあー!なんで食べられないのかねえ…、せっかく作ったのに!」とこれみよがしに嘆いたり、文句を言ってきます。
昔は、たくさん食べられない、嫌いなものが食べられないと、嘆かれるのが嫌で無理をして食べていましたが、それがとても、本当にとてもつらかったです。
明るく、親子けんかのようにしてしまえればラクなのですが、母はネチネチと思ったことをそのまま言い、自分を悲劇のヒロインにしたいタイプのため、期待に添えない私が悪い感じにもっていかれるのです。
相手は親切だと思って、それを押し付けてくるけれど、それは私にとっての優しさではないのです…。
きっとこういうやりとりは、私のほうが見切りをつけて気にしないようにしないと、メンタルが保てないとわかったので、そういう時は心のスイッチをオフにして、相手が喜ぶ言葉を言うマシーンとなります。
自分の考えがすべて正しいと思う相手に、こちらの本音を見せても無駄なだけですから。
親子関係については賛否両論あるでしょうが、それぞれの家族の性質ごとに問題がちがうので、他人からあれこれ言われようと、自分なりの落とし所を見つけるのが円満のコツだと思います。
『魔女の宅急便』の孫娘にとっても、おばあちゃん本人の前では言えないことを、他人のキキに対して言ってしまうのが彼女の「落とし所」だったのではないかと思います。
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